アメリカで人工網膜の臨床実験が行われ失明した男性が初めて自分の妻の顔を確認するという感動的な出来事がありました。
まだ臨床実験の段階でこの男性が見えたのは輪郭程度だったようですが、愛する人を認識できたというのは何にも変えがたいものでしょう。
素晴らしい技術の発展に感動しました。
さてこの臨床実験にも使われた人工網膜とはそもそもどのようなものでしょう?
人工網膜とは
人工網膜について書く前に網膜について説明する必要があると思います。
網膜とはカメラのセンサーやフィルムにあたる働きをする組織です。
網膜は眼球の最も内側に存在する透明な膜で、光や色を識別する視細胞があります。
この視細胞が光の情報を受け取ると電気信号に変換し視神経として脳に情報が送られます。
網膜の病気としては例えば網膜剥離などがありますが、何らかの理由で網膜が機能しなくなるとフィルムの無いカメラが情報を記憶できない様に受け取った光の情報を脳に送ることが出来なくなります。
人工網膜とは機能しなくなった網膜の代わりに脳に情報を送るものを言います。
現在は電極チップなどで作られた人工網膜を使用することがほとんどです。
人工網膜の機能とこれから
人工網膜はどのように使われているかというと文字通り網膜の代わりに映像を受け取り脳に送る働きをします。
ただ私たちが受け取っているレベルの映像の受け渡しはまだ出来ません。
映像データを小型のカメラなどで写してそれを体外の画像処理装置で処理し、人工網膜に送りさらに電気信号として脳に送ります。
網膜には1億とも言われる膨大な視細胞が存在するため、今の技術では人工網膜でそれほどの膨大な情報を処理できません。
技術革新は進んでいますがぼんやりと光の強弱で輪郭がわかるくらいの情報を送るのが精いっぱいです。
改めて人間の持つ器官の凄さが理解できます。
しかし日々私たちの扱える記録媒体の容量は増加しています。
脳に電気信号を送る電極の小型化も進められているようでこのまま技術が進歩していけばいつか完全に視力を取り戻せる時代が来るかもしれませんね。
またノーベル生理学・医学賞を受賞した山中教授が作製に成功した万能細胞iPS細胞による網膜の再生研究も進められています。
患者のiPS細胞から作られた網膜色素上皮細胞を移植する世界初の手術が行われるなど臨床実験もすでに行われています。
もしかしたら将来的にはiPS細胞から作られた再生網膜を代替えに使える日が来るかもしれません。
多くの人が再び愛する人たちを認識できる素晴らしい未来が訪れることを信じています。